「働く犬」、警察犬の実情

前回、オリンピック大会の開催に併せ「補助犬」の実情を伝えましたので、今回はパラリンピック大会中も警戒にあたっている「働く犬」、警察犬に焦点を当てます。

1912年、イギリスから輸入された2頭の警察犬が日本初の警察犬です。全国の都道府県警察は「直轄警察犬」として警察犬の育成を公費で賄っていますが、その数は全国1400頭の警察犬のうちの1割程度にとどまっています。残り9割の警察犬は都道府県警察が必要に応じて出動を要請する一般家庭で訓練を受けた「嘱託警察犬」なのです。

参考として、東京都を管轄する警視庁では、シェパード23頭、ラブラドール・レトリバーなど13頭の計36頭の直轄警察犬が、麻薬・覚せい剤、銃器、地域捜索などの分野で活躍しています。また、直轄警察犬を導入していない都府県もあります。

さて、警察犬は社会で活躍した後10歳くらいで退役となります。基本的に直轄警察犬は警察がそのまま所有・飼育し続けますが、嘱託警察犬は一般家庭でそのまま余生を送ることになります。しかしながら、補助犬と同様、嘱託警察犬には公的な支援はほとんどありません。警察犬によって支えられている社会秩序は、犬を愛する方の慈善心に頼っているのが実情です。

高齢化に伴い認知症患者の徘徊や行方不明事案が相次ぎ、警察犬の出動回数が増加するなか、警察は直轄警察犬の更なる育成を検討していますが、育成者と予算の確保が課題となっています。警察はこれまで通り嘱託警察犬に依存せざるを得ない状況が続いていますが。

大型の嘱託警察犬を飼育する人が少ないことから、警察が望むような体制には遠く及んでいないのが実情です。

近年では増加する麻薬犯罪への捜査にも警察犬が能力を発揮しており、警察犬への期待は高まるばかりです。

警察犬に支えられている社会の姿を私たちは再認識し、警察犬のあり方について世論を喚起する時かもしれません。

犬に支えられている社会を認識し、その生命に対する考え方や扱い方を根本から見直すべく世界愛犬連盟は活動を続けていきます。

写真:警視庁